写真撮影のエッセンス
故前田真三氏に影響を受けた、とハテブロのモトシさんのブログにコメントしたら
前田真三氏のリクエストを受けたので書いて見ます。
僕が影響を受けた写真家は4人。
並河萬里:写真展を見て感激、写真を始める。
エリオット・アーウィット:ユーモアあるスナップに感激
しかし、技術的な影響はこの二人です。
内田ユキオ:彼のライカ本に、写真の取り方が詳しく書かれている。
背景を決め、主題を配すると記載あり。←確か
※誰かに貸して以来戻って来ていないのでうろ覚え
非常に参考になるのでご一読を。
内田ユキオはモノクロの名手で、文章はかなりナルシストなので好みは分かれますが、
彼の写真撮影方法は非常に参考になります。
綺麗な背景を用意し、そこに主題を入れろと書いてあります。
普通、「ああ綺麗だな」とか「いい感じだな」で写真を撮ることが多いと思うのですが、
それでは背景を決めただけです。
「綺麗な風景を撮ったのに、写真が物足りない」などとおもった事はありませんか?
それは、決定的に主題が入っていないのです。
主題を入れるという事をわかっていないと、物足りない写真になりますね。
それでは背景を決め、主題を入れます。
どうやって入れるのか?
そのヒントは前田真三の写真にあります。
添景を入れるのです。
添景は大きくても小さくてもかまいません。
コントラストの強い物を、気持ちのいい位置に入れてやるのです。
気持ちのいい位置が、バランスのいい位置だと前田真三は著書で書いています。
特徴的なのが美瑛小学校(三角形の鋭い塔が写っている写真)でしょう。
非常に小さいのですが、存在感が抜群です。
最初に見たときはショックを受けました。
こんなに小さくてもいいのか、写真の主題として成立するのか、って。
僕の経験上では、小さい添景は写真の周囲に、
大きい物はちょっと真ん中目に配置してやるといい感じです。
いずれにせよ、一歩引いて取る必要があります。
ど真ん中は添景になりにくく、バランスが悪い気がします。
詰まるところ、写真は添景が全てであり、非常に重要であると断言してもかまわないと思います。
いい添景の写真は、大伸ばしに耐えることが出来ます。
添景は、小さくても存在感がある。特に、人や動物は存在感が多きい。
猫などの大きい物は少し真ん中目。ただしど真ん中ではない。
大きいといっても、この黒猫くらいあれば十分。これ以上の大きさは必要無い。
しかし、主題を制限すると背景の配置に気を配らなくてはならない。
この写真は薪や黄色い自転車を配置し、主題に負けない力を背景に持たせようとした。
添景の他に、前田真三から学ぶべき点は多いです。
氏の風景写真には人工物が結構写っているんです。
美瑛小学校は人工物の最たる物ですよね。
僕は、今のスナップになる前は風景っぽいのを写していました。
風景は人工物は駄目だ、と思っていましたのでショックがありました。
氏は美瑛の美しさは人工に切り開かれた土地の美しさだ、と書いています。
自然ではなく、人工の、人の手が入った美しさです。
我々が風景写真として接しているものは、実は自然ではなく、人工なのです。
ただし、近年の写真はスマートフォン、パソコンの発達により変質しつつあります。
スマートフォンで綺麗に見える写真がもてはやされる時代になりました。
これに対応するには、アップ目、派手な色使いまはた綺麗なグラディエーション
がひつようになり、構図も微妙に添景を配置する複雑な物は人気がない気がします。
僕の写真は、インターネットなどではそんなに人気がありませんからね。
好みとしては、見やすい単純な構図よりも複雑な構図を好みます。
画面ではわかりにくく、伝わりにくいかもしれません。
写真はプリントすべきという理念はこういう点にあります。
前田真三の写真、上高地ではなく美瑛の写真を見直して欲しいと思います。
氏の美瑛の写真は、写真のテクニックが全て詰まっていると言ってもいいと思います。